Spotify Technology S.A.
Spotifyの広告付き無料サービスとPremium(有料)
- 国
- ルクセンブルク(本社機能はスウェーデン)
- 上場
- ニューヨーク証券取引所 SPOT
- 参照資料
- FY2025(2025年12月期)Form 20-F
広告付きの無料サービスで利用者を集め、そこから有料のPremium購読者を獲得する音声配信企業の事例です。
事業の概要
Spotifyは、音楽・ポッドキャスト・オーディオブックを配信する音声ストリーミングサービスを運営しています。Form 20-F(2025年12月期)は、2025年12月31日時点で184の国と地域に7億5,100万人のMAUと2億9,000万人のPremium Subscribers(有料購読者)がいると記載しています。
同社は、サービスを「Subscription Offerings(Premiumなどの有料購読)」と「Ad-Supported Service(広告付きサービス)」の2つで提供しており、収益化は購読と広告の両方で行っていると説明しています。
収益の仕組み
同20-Fは、Premium Subscribersの新規獲得は主に広告付きサービスの利用者(Ad-Supported Users)の転換から生じており、広告付きサービスは獲得した有料購読者の相当部分の入口(funnel)になっていると説明しています。同社はまた、Ad-Supported Usersを増やせない、またはPremiumへ転換できない場合は収益に悪影響が出うるとリスクとして挙げています。
Premium収益は購読料と購読者数の関数であるとされています。一方、広告付きサービスの収益は広告主からの広告収入です。広告収入は、利用者数やエンゲージメント、広告枠の価値などに左右されると記載されています。
公開資料から読み取れること
Form 20-F(2025年12月期)の数値は次のとおりです。
- 総収益:171億8,600万ユーロ(前年比10%増)
- Premium収益:153億5,000万ユーロ(前年比11%増、総収益の89%)
- Ad-Supported収益:18億3,600万ユーロ(前年比1%減、総収益の11%)
- 売上総利益:Premium 51億6,600万ユーロ、Ad-Supported 3億3,000万ユーロ、合計54億9,600万ユーロ
- Premium売上総利益率:33%から34%に上昇
- 営業利益:21億9,800万ユーロ(前年は13億6,500万ユーロ)
- MAU 7億5,100万人のうちAd-Supported MAUは4億7,600万人(前年比12%増)
- Premium Subscribers:2億9,000万人(前年末は2億6,300万人)
広告付きの収益は総収益の11%にとどまる一方、同社は、広告付きサービスは有料購読者を獲得する入口の役割を持つと説明しています。
新規事業への示唆
収益の大半を有料側が占める構造のため、無料利用者の数だけでなく、無料利用者からどれだけ有料購読へ移ってもらえるかが事業の成否に直結すると読み取れます。Spotifyの例では、無料側にも広告収入という収益源があり、無料利用者の運営費用の一部を賄う設計がとられています。
また、同社はコンテンツの権利者へのロイヤルティを原価として負担しており、利用者が増えるほど費用も増える構造です。無料版を設計する際は、無料利用者1人あたりの提供費用を、広告収入や有料転換でどう回収するかを考える必要があります。
参考資料
この事例は各社の公開資料をもとに整理したもので、記載は参照資料の時点の内容です。最新の情報は各社の公式発表をご確認ください。
