Visa Inc.
Visaの決済ネットワーク(カード決済の処理)

国
米国
上場
ニューヨーク証券取引所 V
参照資料
FY2025(2025年9月期)Form 10-K

カード決済の金額と処理件数に連動して金融機関から手数料を受け取る、世界最大級の決済ネットワーク運営会社の米国の事例です。

事業の概要

Visaは、200を超える国と地域で決済ネットワークを運営する米国企業です。Form 10-K(FY2025、2025年9月期)は、同社は金融機関ではなく、カードの発行も与信も、カード会員向けの金利や手数料の設定もしないと記載しています。多くの場合、カード会員や加盟店との関係は同社の顧客である金融機関が持つとされています。

同10-Kによると、2024年(暦年)のVisaの決済金額は13兆4,330億ドル、総取引件数は3,110億件、カード枚数は48億500万枚で、同書が挙げる競合ネットワークと比較した数値として示されています(Nilson Report等を出典とする記載)。

収益の仕組み

同10-Kは、純収益を次の区分で説明しています。サービス収益は顧客による決済サービスの利用に対するもの、データ処理収益はオーソリゼーション・クリアリング・決済処理などに対するもの、国際取引収益は国境をまたぐ取引処理と通貨換算に対するもの、その他収益はブランドや技術のライセンス料などです。さらに、金融機関や加盟店などに支払うクライアントインセンティブが収益から差し引かれます。

同社は、決済金額がサービス収益の主な要因、処理した取引件数がデータ処理収益の主な要因だと説明しています。インターチェンジ(一般に加盟店契約会社から発行会社へ支払われる手数料)は、加盟店が得る価値とカード会員側の負担のバランスを取る役割があると説明しています。

公開資料から読み取れること

Form 10-K(FY2025)の数値は次のとおりです。

  • サービス収益:175億3,900万ドル(前年比9%増)
  • データ処理収益:199億9,300万ドル(同13%増)
  • 国際取引収益:141億6,600万ドル(同12%増)
  • その他収益:40億5,300万ドル
  • クライアントインセンティブ:△157億5,100万ドル(同14%増)
  • 純収益:400億ドル(同11%増)、営業利益:239億9,400万ドル、純利益:200億5,800万ドル

クライアントインセンティブは総収益(上の四つの合計)の約28%に相当します(当サイトによる計算)。また、付加価値サービスの収益は109億ドルと記載されています。営業利益を純収益で割ると約60%です(当サイトによる計算)。なお、営業費用には訴訟引当金25億6,200万ドルが含まれています。

新規事業への示唆

決済ネットワークは、利用が増えるほど加盟店と発行会社の双方にとっての価値が高まる仕組みです。Visaの収益は決済金額と処理件数という取引量に直接連動しており、カードを自ら発行せず与信リスクを負わない点が事業の特徴として記載されています。一方で、金融機関への還元(クライアントインセンティブ)が大きく、参加者を増やすために収益の一部を手放す設計であることも数字から分かります。新規事業で決済ネットワークやプラットフォームを検討する場合は、参加者への還元と取引量の拡大を同時に設計する必要があります。ネットワークそのものを立ち上げるのは許認可と規模の面で難しく、既存のネットワークの上でサービスを作る形が現実的です。

参考資料

この事例は各社の公開資料をもとに整理したもので、記載は参照資料の時点の内容です。最新の情報は各社の公式発表をご確認ください。