HubSpot, Inc.
HubSpotの顧客プラットフォーム(Smart CRMと複数のHub)

国
米国
上場
ニューヨーク証券取引所 HUBS
参照資料
HubSpot Form 10-K(2025年12月期)、Form 10-Q(2026年6月30日終了の四半期)

CRMを土台にマーケ・営業・サービスなど複数のHubを提供し、既存顧客への追加販売で1顧客あたり売上の拡大を図る米国企業の事例です。

事業の概要

HubSpotは、マーケティング・営業・カスタマーサービス担当者向けのクラウド型「顧客プラットフォーム」を提供しています。Form 10-K(FY2025、2025年12月期)によると、プラットフォームは、顧客情報を一元管理する Smart CRM と、Marketing、Sales、Service、Operations、Content、Commerce の各 Hub(機能群)などで構成されています。

同10-Kは、各Hubは単独でも、他社CRMと組み合わせても、他のHubと併用しても使える設計であり、無料版と有料版があって機能が段階的に増えると説明しています。2025年末の顧客数は28万8,706社と記載されています。

収益の仕組み

同10-Kによると、収益の大半はプラットフォームのサブスクリプションで、2025年は売上の98%を占めています。プランごとに基本料金が異なり、いずれにも Smart CRM と連携するアプリケーションが含まれます。保存する連絡先数がしきい値を超えると追加料金がかかり、サブスクリプション・製品・利用者席の追加購入からも収益が生じるとされています。

既存顧客からの売上拡大の方法として、同10-Kは次の点を挙げています。

  • 追加機能や上位プラン、ユーザー追加による「アップセル」
  • 既存顧客に対し、営業担当者を介さない(または少ない)製品内購入で別の製品を売る「クロスセル」
  • 無料製品から有料のHubへ移行してもらう freemium の仕組み

直接販売の説明でも、無料製品と製品内のクロスセルの提案が、営業担当者の関与が少ない状態での新規契約獲得を助けると記載されています。

公開資料から読み取れること

Form 10-K(FY2025)の数値は次のとおりです。

  • 売上高合計:31億3,127万ドル(うちサブスクリプション売上30億6,392万ドル、前年比19%増)
  • 顧客数:24万7,939社から28万8,706社へ増加
  • 1顧客あたり平均サブスクリプション売上:1万1,343ドルから1万1,414ドルへ増加
  • ネット・レベニュー・リテンション:103.5%(2024年は101.8%)

同10-Kは、顧客数の増加を主に低価格の Starter 製品への需要、1顧客あたり売上の増加を Professional・Enterprise 製品への需要と為替の影響によるものと説明しています。Form 10-Q(2026年6月30日終了の四半期)では、顧客数は30万6,446社、3か月間の1顧客あたり平均サブスクリプション売上は1万1,800ドルと記載されています。

新規事業への示唆

HubSpotの資料からは、入口を無料または低価格の製品にして顧客数を増やし、その後に上位プランや別のHubを追加してもらう段階的な設計が読み取れます。2025年は顧客数が約16%増える一方、1顧客あたり売上の伸びは小さく、低価格の製品で入った顧客が増えると平均単価が伸びにくいことも数字に表れています。

新規事業で複数の製品を持つ場合は、共通の顧客データを土台にして、2つ目以降の製品を営業担当者の手を借りずに追加できる導線を設計できるかが論点になります。入口の製品と追加製品の価格差、および追加購入の比率を、顧客数と1顧客あたり売上の両方で追う必要があります。

参考資料

この事例は各社の公開資料をもとに整理したもので、記載は参照資料の時点の内容です。最新の情報は各社の公式発表をご確認ください。