Hinge Health, Inc.
関節・筋肉の痛み向けデジタルケア「Hinge Health」

国
米国
上場
ニューヨーク証券取引所 HNGE
参照資料
FY2025(2025年12月期)Form 10-K

自己負担型の雇用主や医療保険会社を顧客に、その加入者・従業員へ腰痛などのデジタルケアを提供し、参加者数に応じて課金する米国企業の事例です。

事業の概要

Hinge Healthは、関節や筋肉の痛み(MSK)に対するケアを、ソフトウェアとAIで自動化して提供する企業です。Form 10-K(FY2025、2025年12月期)によると、会員(member)は、AIによる動作計測技術と電気神経刺激のウェアラブル機器を使い、理学療法士・医師・ヘルスコーチからなるケアチームの監督を受けながら、自宅などで運動療法を行います。

同10-Kは、顧客(client)は主に自己保険型(self-insured)の雇用主で、自治体や労働組合なども含むと説明しています。また、2025年末時点で2,830社を顧客として持ち、契約対象の人数(contracted lives)は約2,500万人としています。

収益の仕組み

同10-Kは、同社が「年間サブスクリプションモデル」を採用し、顧客は「プログラムに参加した会員の分だけ」支払うと説明しています。収益は、会員が参加した後の12か月にわたり、ほぼ均等に計上されるとされています。平均契約期間は2025年末時点で3年と記載されています。

販売経路について、同10-Kは、自己保険型の顧客については、顧客の医療保険会社、第三者管理会社(TPA)、薬剤給付管理会社(PBM)などと組むことで、契約・調達・導入・請求の手間を減らすとしています。2025年末時点でパートナーは60社超で、顧客の過半はパートナー経由で契約しており、パートナーは顧客を紹介した際に管理手数料やマーケティング手数料を受け取ることが多いと記載されています。このほか、保険会社が顧客となる、完全保険型の雇用主やメディケア・アドバンテージの加入者向けも、パートナーを通じて広げていると説明しています。

公開資料から読み取れること

Form 10-K(FY2025)の数値は次のとおりです。

  • 収益:5億8,786万ドル(前年比51%増、増加の主因は既存顧客からの収益増と説明)
  • 粗利益率:80%(前年は77%)
  • 営業損失:5億4,637万ドル(前年は3,191万ドル)。この期のIPO関連で、株式報酬費用が6億4,301万ドル計上されています(前年は74万ドル)
  • 顧客数:2,830社(前年末2,256社、2023年末1,657社)

契約の対象人数は2,500万人ですが、課金は参加した会員に連動するため、対象人数の増加と収益の増加は同じではありません。同10-Kも、参加の取り込み方が想定どおりに収益化できないリスクを挙げており、参加度合いに応じた新しい料金体系を近く導入する予定とも記載しています。

新規事業への示唆

払う人(雇用主・保険会社)と使う人(会員)が別である型では、契約上の対象人数と、実際に使う人の数がずれます。Hinge Healthは「参加した会員の分だけ支払う」設計で顧客の導入ハードルを下げていますが、収益は参加率に左右されるため、参加を促す体験づくりが収益に直結します。

また、保険会社やPBMなど既に雇用主との契約を持つ事業者をパートナーにすると、契約・導入の手間を減らせる一方、パートナーへ手数料を支払う構造になります。新規事業では、どの事業者の既存契約に乗れるかと、その対価をどう設計するかを検討する必要があります。

参考資料

この事例は各社の公開資料をもとに整理したもので、記載は参照資料の時点の内容です。最新の情報は各社の公式発表をご確認ください。