HashiCorp, Inc.
Terraform・Vault等のオープンコア製品とHashiCorp Cloud Platform

国
米国
上場
NASDAQ HCP
参照資料
FY2024(2024年1月期)Form 10-K、および2024年10月期 Form 10-Q

製品をオープンソースで公開して開発者に広め、企業向けの有償機能とサポートを年間契約で販売した米国企業の事例です。

事業の概要

HashiCorpは、クラウドのインフラ構築・運用・セキュリティなどのソフトウェアを提供する米国企業です。Form 10-K(FY2024、2024年1月期)は、同社が意図的にオープンコア(open-core)の開発モデルを採用したと記載しています。製品はオープンソースのプロジェクトとして開発され、同社は、そのうえに企業向けの追加機能を載せた独自の商用ソフトウェアを販売すると説明しています。

同10-Kは、製品がFortune 500の85%でダウンロード・利用されていると記載しています(2024年1月31日時点)。開発者が無償で試して広がり、大企業での採用段階で営業部隊が有償契約を結ぶ流れを「adopt, land, expand, extend」と呼んでいます。

収益の仕組み

同10-Kによると、収益は購読が中心で、次の3つに分かれます。

  • ライセンス:自社運用型(self-managed)の期間ライセンス
  • サポート:自社運用型に付随するサポートと保守(単独では販売されないと記載)
  • クラウド型サービス:HashiCorp Cloud Platform(HCP)

自社運用型のライセンス期間は通常1〜3年で、1年契約は前払い、複数年契約は主に年次の前払いで請求されると説明されています。製品は基本モジュールに任意のモジュールを加える形で、利用量に応じて価格が上がる段階料金です。また、同社は2023年8月に、無償のコミュニティ版の今後のバージョンのライセンスをBusiness Source License(ソースアベイラブル)に変更したと記載しています。

公開資料から読み取れること

Form 10-K(FY2024)の数値は次のとおりです。

  • 総売上高:5億8,314万ドル(前年4億7,589万ドル、23%増)
  • 内訳:ライセンス6,761万ドル、サポート4億2,095万ドル、クラウド型7,609万ドル、プロフェッショナルサービス等1,849万ドル
  • 純損失:1億9,067万ドル(前年2億7,430万ドル)
  • ARR10万ドル以上の顧客:897社(前年798社)。これらの顧客が売上の89%を占める
  • ネット・ドル・リテンション率(過去4四半期平均):115%(前年131%)

同社の直近の資料は2024年10月31日期の四半期報告書(Form 10-Q)で、9か月累計の総売上高は4億9,911万ドル(前年同期4億2,735万ドル)、リテンション率は109%と記載されています。同10-Qには、2024年4月24日にIBMと合併契約を締結した旨の記載もあります。

新規事業への示唆

売上の約7割をサポートが占める構成(4億2,095万ドル÷5億8,314万ドル)から、OSSを無償で配るだけでなく、有償でなければ得られない価値(企業向け機能とサポート)の設計が収益を決めることが分かります。

一方、同社が公開した資料には、ライセンス変更により競合に使われることへの懸念と、開発者コミュニティの評価が下がるリスクが並んで記載されています。オープンにして広げる施策と、競合のただ乗りを防ぐ施策は両立が難しいため、事前に線引きを決めておく必要があります。

参考資料

この事例は各社の公開資料をもとに整理したもので、記載は参照資料の時点の内容です。最新の情報は各社の公式発表をご確認ください。