PoCの費用の考え方:内訳、見積もりの読み方、費用負担と会計処理
PoC(概念実証)を外部に頼むとき、あるいはスタートアップと一緒に進めるとき、「PoCにはいくらかかるのか」「費用は誰が負担するのか」は必ず議論になります。
PoCの費用は、何を確かめたいのか、そのためにどこまで作るのかで大きく変わります。この記事では、費用の内訳と見積もりの読み方、費用負担の決め方、会計処理の基本、費用を抑える進め方を整理します。PoCそのものの進め方はPoC・プロトタイプ・MVPの違いと進め方で扱っています。
PoCの費用が決まる要素
PoCの費用は、主に次の要素で決まります。
- 確かめたいこと:技術的に実現できるか、業務で使えるか、費用に見合う効果があるか、など
- 作る範囲:画面の数、機能の数、扱うデータの量、既存システムとの連携の有無
- 期間と体制:何週間で、誰が何人関わるか
- 環境とデータ:検証用の環境、クラウドの利用料、データの準備や加工にかかる手間
- 評価にかかる作業:利用者の募集、計測、結果の分析と報告
特に費用が膨らみやすいのは、既存システムとの連携と、データの準備です。PoCの段階では、連携を手作業で代替したり、使うデータを絞ったりすることで、費用を大きく抑えられることがあります。
費用の内訳
見積もりには、おおむね次のような項目が含まれます。どの項目が含まれていて、どれが別料金かを確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検証の設計 | 目的、評価指標、成功基準、範囲の決定 |
| 設計・開発 | 画面、機能、データ処理、連携の実装 |
| 環境・ツール | クラウドの利用料、外部サービスの利用料、ライセンス |
| データの準備 | データの収集、加工、匿名化 |
| 試行・計測 | 利用者の募集、試行の運営、計測 |
| 評価・報告 | 結果の分析、報告書、次の段階への提案 |
| プロジェクト管理 | 定例会議、進捗管理、関係者との調整 |
見積もりで確認すること
- 検証の目的と成功基準が書かれているか:何が分かれば成功かが決まっていないと、作業が膨らみます。決め方はPoCの評価指標と成功基準の決め方を参照してください
- 作る範囲と作らない範囲:どの機能を作り、どこを手作業で代替するか
- 含まれない費用:クラウドの利用料、外部サービスの料金、データの準備、利用者への謝礼など
- 契約の形:PoCは結果が分からないから行うものなので、成果物の完成を約束する請負ではなく、業務の実施を約束する準委任で結ぶことが多くあります。違いは開発会社との契約の注意点(請負と準委任)で扱っています
- 成果物と権利:報告書やプログラムを自社でどこまで使えるか
- 次の段階に進む場合の扱い:本開発に進むとき、PoCで作ったものを引き継げるか
複数社から見積もりを取るときは、確かめたいことと範囲を1枚にまとめて同じ条件で依頼すると比べやすくなります。MVP開発を外注するときの発注先の選び方と見積もりの読み方も参考になります。
スタートアップとのPoCの費用負担
大企業がスタートアップと組んでPoCを行う場合、費用を誰が負担するかは重要な論点です。
特許庁が公開しているオープンイノベーションのためのモデル契約書(PoC契約)では、スタートアップが検証を行い、事業会社が委託料を支払う形を想定しています。新素材編の解説では、委託料は検証作業の対価であり、知的財産の譲渡の対価ではないと整理されています。また、本開発への移行をほのめかしながら無償でPoCを依頼し、スタートアップが費用を回収できないまま疲弊するような事態を防ぐことが、PoC契約の背景として挙げられています。
費用負担を決めるときは、次の点を話し合っておきましょう。
- 検証作業の対価として、委託料をいくら、いつ支払うか
- 事業会社が提供するもの(データ、設備、担当者の時間)
- 検証の結果の扱いと、次の段階に進むかを判断する期限
モデル契約書の詳しい内容はPoCの契約:モデル契約書で押さえる点で解説しています。スタートアップとの協業全体の進め方はスタートアップとの協業・事業提携の進め方を参照してください。
PoCの費用の会計処理の基本
PoCの費用を会計上どう処理するかは、その支出の性質によって変わります。基本となる考え方は、企業会計審議会の「研究開発費等に係る会計基準」に示されています。
- 同基準は、研究を「新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究」、開発を「新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること」と定義しています
- 研究開発費は、すべて発生時に費用として処理することとされています
- ソフトウェアについては、研究開発に該当する部分は研究開発費として扱い、それ以外は目的(市場販売目的か、自社利用か)によって処理が分かれます。自社利用のソフトウェアは、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合に資産として計上するとされています
PoCがどの区分に当たるか、税務上どう扱うかは、支出の内容や契約によって判断が変わります。実際の処理は、自社の経理部門や監査法人、税理士に確認してください。
費用を抑える進め方
- 確かめたいことを一つに絞る:技術、業務への適合、効果を一度に確かめようとすると、範囲が広がります
- 作らずに確かめられないか考える:手作業での代替、既存ツールの組み合わせ、ノーコードで確かめられることもあります。ノーコードでMVPを作るときの進め方と限界を参照してください
- 既存のパッケージを使えないか検討する:ゼロから作るか、既存のパッケージを使うかの判断基準で扱っています
- 段階を分ける:最初は小さな範囲で確かめ、結果を見て次の範囲と予算を決めます
- 終わりの条件を決める:期間と予算の上限、中断する条件を最初に決めておきます
PoCの目的、評価指標、体制、予算を整理するには、PoC計画書テンプレート(無料のExcel)が使えます。予算のシートは、費目ごとに数量と単価を入れると予定額と合計を計算し、承認済みの上限との差額を表示します。
PoCの計画と実施を一緒に進める
zigyo.aiのPoC / MVP Sprintでは、検証の目的・機能範囲・評価条件を決め、必要な機能に絞って実装し、利用結果で次の判断ができる状態にします(PoC Starter:300万円〜・税別、6週間〜。提供・開発はOtsumu株式会社)。機能数、外部連携、セキュリティ要件によって費用と期間は変わるため、範囲を決めてからお見積もりします。
何を確かめるべきか、PoCが本当に必要かを整理したい段階なら、30分の無料診断からご相談ください。
まとめ
- PoCの費用は、確かめたいこと、作る範囲、期間と体制、環境とデータ、評価の作業で決まる
- 見積もりでは、成功基準、作る範囲と作らない範囲、含まれない費用、契約の形、成果物の権利を確認する
- スタートアップとのPoCでは、委託料を検証作業の対価として決め、提供するものと判断の期限も合意する
- 会計処理は支出の性質で変わる。基本は研究開発費等に係る会計基準で、実際の処理は専門家に確認する
- 確かめることを絞り、段階を分けることで費用を抑えられる
参考資料
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